伊豆急下田駅から車で婆娑羅(バサラ)峠を越え、道中、霧に霞む山並みに紅葉がほんのり色づいていますが、
気温はだいぶん暖かく感じられる伊豆です。
さて、松崎町に到着後、静岡県指定有形文化財 旧 依田(よだ) 邸 に立ち寄りました。
ここは、依田勉三の生家です。
民家としては伊豆地域で2番目に古い建物だそうで、なまこ壁の住宅としては最古だといいます。
なまこ壁とは、伊豆特有の建築様式で、火災などに強い建築です。
火災になった場合、冬に吹く強い西風による延焼を防いでくれるのです。
元禄期の約300年前に、13年かけて建築された母屋と、200年前に建てられた離れ、
そして、幕末から明治期にかけて建てられた蔵 3棟、合計5棟が静岡県の文化財に指定されています。
旧依田邸は、以前は「大沢温泉」という宿泊施設でした。
今は亡き私の父が大好きな場所でしたので、幼い頃、毎年夏休みには家族で大沢温泉に宿泊し、
目の前の川で家族と親戚と友人で遊んだ記憶が蘇ります。
その頃、旧依田邸の敷地内には立派な水車があり印象的でしたが、今は無くなっておりました…
老朽化でしょうか。
でも、入り口の立派な橘(たちばな)の家紋は未だに健在で、懐かしさがこみあげました。
武田信玄の家来だった依田家は、戦国時代の終わりに甲州からここ西伊豆の松崎へ移り住み、
400年間この地で地域を支えてきた豪農。
その家に生まれた依田勉三は、幕末の偉大な漢学者で教育家、土屋三余が開いた「三余塾」で兄の左二平と共に学び、
後に、慶應義塾で学び、福沢諭吉やホーレス・ケプロンの影響も受け、北海道開拓の志を育んでいきます。
旧依田邸の目の前に流れる那賀川一帯の風景は、約500年間変わらないそうで
これまた一層、貴重な景色に思えます。那賀川は途中の橋を境に稲生沢川と表示されています。
春になると、那賀川の河口から約6km、およそ1200本のソメイヨシノが咲き誇り、
それはそれは美しい光景が広がります。「田んぼをつかった花畑」もまた心が春めき素敵なのです。
通りすがりの 三餘塾(さんよじゅく)資料館 も、今度 ゆっくり立ち寄ってみたいです。
つづく…
2022.11.15