「コケコッコ―!」のニワトリではなく、
「ゴヒ―ゴヒ―ッ!!」と大音量で鳴くのロバの声が目覚まし代わり。
5:00am まだ辺りは薄暗い。よし、いまのうちだ!
地べたで毛布に包(くる)まって寝ている現地スタッフを踏まないよう
トイレットペーパーを片手に、ヘッドライトを頭に装着して砂利道をてくてく歩きトイレの場所を探す旅に出る。
「ところどころに地雷(糞)があるので気を付けて下さい(笑)」
と、昨夜言われた通り、ロバや、ラクダや、村人や、我々(?) の糞(地雷)がアートのように間隔をおいて並んでいる。
現場に辿り着いたらヘッドライトを消し、まわりをぐるりと見回し良き場所を確保。
村の子供たちが通り過ぎる気配や笑い声に敏感に反応してしまう。
ある日、明るいお日様の下で
私が用を足す一部始終を村の男性に見られていたこともあった。
振り返ったらその人は笑っていた。
「なに、見てんのよ・・・」
信じられない。まったく!!
言葉は通じないし・・。私は堂々とズボンを履き、振りかえらずに砂利を踏みしめて歩き去った。
振り向きたくなかった。
こんなとき、ジョークにして笑い飛ばすべき??
旅の恥はかきすて・・・って言いますものね。これも一期一会ですって?
もう、ここまできたら何を踏んでしまってもかまわない。
あぁ、もうお嫁にいけない・・・。
7:00am 朝食
オートミール、卵焼き、パン、インスタントのシジミのお味噌汁、、
コックのイエティムさんが用意してくれる食事は上出来だった。
夜が明ける前、まだみんなが寝静まっているあいだに
カタコトカタコト卵をかき混ぜる音が響き、夜が明けてみんなが起き出すときには
しっかりと、ごはんの準備が整っていて、、、
私たちが「ありがとー!」というと、けらけら笑いながら「マキアート!」と返ってくる。
どうやら‘ありがとう’が‘マキアート’に聞こえるらしいの。「マキアート!」「アリガト―!」「マキアート(笑)」って、(まるでスタバのやりとりみたい。)
現地スタッフはみんな働き者でとても陽気。
自分たちの食事は後回しにし、私たちに椅子を譲り、嫌な顔一つせず歌を口ずさみながらニコニコお皿を洗ってくれる。
ペットボトルの水がヒートアップしない方法も知り尽くしている。
この熱風の中でペットボトルの水をこれ以上温めてしまわない方法は、ペットボトルを湿らせた靴下でくるむこと。
気化熱だ。
すばらしい土着民の知恵!
靴下を濡らすのと濡らさないのとでは水の温度が大きく変わることに驚いた。
で、その靴下を水浸しにする作業さえ私たちを優先し、手伝ってくれる毎日。一日に1.5リットルのペットボトルが一人4本は軽く飲み干してしまう勢いで、このままで水は足りるのか!?と心配になる。
さて、私が海と見間違えた、海のような雪原のような白い大地の正体は
広大な塩湖。
塩の採掘をするキャラバン隊商は、このアサ―レ湖から私たちが出発した標高2000以上のメケレまで約一週間かけて延々と歩いて塩を運ぶのだという。
塩湖でキャラバン隊が荷物を積み終わり出発するまで、撮影をさせてもらったけれど
にしても、、暑い!!とにかく暑い!! 日陰もないこの炎天下で
塩を掘り、切り、ラクダに積むまで丸一日この炎天下で働く彼ら、、人間業とは思えない。
唯一の日陰は車の中。しかし、ここも暑い・・・。熱中症になりそうだった。
それでもじーっと出発を待つラクダたち。いざ背中に塩を積まれると、出発を拒むラクダもいたり。
伸びてしまっているラクダもいたり・・・。
そして、誰かがぼそっと呟いた。
「ラクダの幸せってなんだろう・・・」
「そうね。ラクダの幸せね・・・」
「ラクダって、えらいなぁ」
「ロバは、もっとかわいそうだよ。働くだけ働かされて、食べられさえしない。」
「でも、ラクダたちをまとめている隊長の足だって、靴ずれして血が出てる・・・。」
何度も塩を積み直し立ったり座ったり立ったり座ったりを繰り返し、日はすっかり暮れ始め空にぽっかりお月様が現れたころ、ようやく動き始めた。
いよいよ出動。
山の稜線に沈んでいく太陽。
夕焼けに照らされて進んでいく長い長いラクダの行列は、
あまりにも儚く、美しすぎて・・・すべてを許せてしまえると思った。
聞こえるのは、ゆっくりゆっくり大地を踏みしめる彼らの足音だけ。ここからまた一週間歩き続けるなんて。。。
とても穏やかに時が流れる中、おもわず拝みたい気持ちになった。
このまま、いつまでもラクダを見送っていたかった。
いつまでも、いつまでも。どこまでも、どこまでも。
ありがたい気持ちで心が満杯になった。なにもかも許してしまおう・・・